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2017.08.23
看護研究と文献検索 その5
「看護研究と文献検索」もその5となりました。
勝手にシリーズ化している ぴんく です。
以前の投稿はこちらよりお読みください(http://jhla.jp/blog/2016/10/2435/)。
今回は番外編、準備をしていたら見つけちゃった「気になる検索式」です。
今年は新たな試みとして、臨床検査技師対象の文献検索勉強会も開催しました。
診療ガイドラインのクリニカルクエスチョンを例題に、「検索式」欄に記載されている使用したデータベース、 キーワードをなぞりながら解説するスタイルです。
こちらについてもいつか触れてみようと思いますが、今回はそれにまつわるオマケから。
(わりとこっちの方がいつも好評のようで。。。)
「診療ガイドラインにかいてある検索式で、おかしなものを見つけました」という報告です。
ただ、これを伝えるのが難しい。
あっさりわかる人もいるでしょうが、せっかくなので細かく説明してみます。
診療ガイドラインに記載されている検索式(変じゃない???)
- hematuria[majr]/diagnosis
→「hematuria」(血尿)というMesh(シソーラス)で、サブヘディング(副標目)はdiagnosis(診断)を選択、さらに文献の「Major Topic」(中心的主題)であるキーワードを指しているように私には見えた
PubMedでの検索結果(件数を見てみるとさらに疑いが濃くなります)
#3 Search hematuria[majr]/diagnosis 3377
#2 Search "Hematuria/diagnosis"[Majr] 953
#1 Search "Hematuria/diagnosis"[Mesh] 2180
(※件数は2017年7月28日現在)
#1と#2はMeshデータベース副標目の「diagnosis」を入れて、かつ「Restrict to MeSH Major Topic.Subheadings」を選択するかどうかの違い。
#3が本当に文献の中心的な主題としての診断に関する「血尿」というMesh(シソーラス)であれば、#1や#2より多くなるはずありません!
詳しく見るために、#3のSearch detailsを確認してみましょう。
"hematuria"[MeSH Major Topic] AND ("diagnosis"[Subheading] OR "diagnosis"[All Fields] OR "diagnosis"[MeSH Terms])
あー。。。。
なるほど、以下の2種類を掛け合わせていると思われます。
- 文献の主題としての「血尿」
- 「血尿に関する診断」でなくても「何かについて“副標目で診断”とされている文献」や、「”診断”というキーワードが使われているもの」や「Meshで網羅的に診断に紐づけるけられているキーワード(Mesh がdiagnosis)」
診療ガイドラインの検索ですし、漏れがあるよりはノイズが多くてもということでしょうか。
問題は、この中で最低限"Hematuria/diagnosis"[Mesh]、つまり「血尿に関する診断」の文献が漏れていないかです。
ORで確かめてみましょう。
Search (hematuria[majr]/diagnosis) OR ("Hematuria/diagnosis"[Mesh]) 4158
4158((hematuria[majr]/diagnosis) OR ("Hematuria/diagnosis"[Mesh]))-3377(hematuria[majr]/diagnosis)=781
あ、ついてきてます?
つまり、「網羅的であるはずの“血尿・診断関連の文献”」の中から、「Meshの“血尿に関する診断”」のうちの781件が漏れているようなので、ちょっとまずい気がします。
もちろん、ヒットした内容の吟味までしていないのでなんとも言えませんが、願わくば検索式の記述間違い(診療ガイドラインに掲載した段階の)であって欲しいものです。
(そろそろベテランか? 9年目のぴんく)
コメント
聖隷佐倉市民病院図書室の山口と申します。
余計なお世話ですが、ちょっとコメントをさせてください。
ガイドラインの検索式については、ぴんくさんのご指摘の通りだと
思います。補足的にいくつか挙げさせてください。
1 Hematuria/diagnosis[mesh]の[mesh]は記述する必要
はありません。Subheadingが付くのは必ずMeSHですので
ここでもMeSHのHematuriaを自動的に検索にゆきます。
2 SubheadingでDiagnosisを使用する場合に気を付けたいこ
とがあります。通常 疾患/Subheading の組み合わせで
索引した場合には、診断方法のMeSHを組み合わせて付与
することになっていますので、検索する際にも診断の方法が
特定できる場合にはその語(MeSH)と掛け合わせて使用す
るのが良いと思います。
3 SubheadingのDiagnosisを使用する場合、血液の検査は
Blood、尿検査の場合はUrineなどのSubheadingが使用
できないかどうかを検討するのがよろしいのではないかと思い
ます。(あと脳脊髄液の検査ではCerebrospinal fluidを)
これらのSubheadingはDiagnosisの下位語ではありませ
んので、Explodeはしてくれません。
4 ガイドラインの検索式ですが、おそらくまずHematuria[majr]
で検索した後で、ヒット件数が多かったので絞り込みのために
diagnosisというSubheadingを付けたのではないかと思い
ます。ありがちな間違いですね。検索された方の名誉のため
に付け加えさせていただきます。
では、今後ともよろしくお願いいたします。
- 2017.09.04 22:21
- 山口直比古
山口先生、フォロありがとうございます。
今回は、文献検索勉強会の準備の中で、検査技師さんに「この検索式はどうゆう意味か」と突っ込まれた時の対策のためにここのみを掘り下げてしまったので、ガイドライン作成のために有用な文献を探し出すための視点からはちょっとそれていましたね。
詳しく解説をしていただき大変勉強になりました。
こちらこそ、何卒よろしくお願いいたします。